以前、ご紹介した中上級者向けのテキスト『日本文化を読む』を昨年12月から久しぶりに使用しています。
先日、沢木耕太郎の短編小説『大根を半分』を授業で読みました。
大好きな沢木耕太郎の作品を学生とともに味わえるのは幸せな時間でした。
たった数ページの作品ですが、読み始めると、すぐに作品の世界に引き込まれ、現実を忘れます。
沢木耕太郎ならではの細やかな心理描写が素晴らしい小説ですが、それゆえ、外国人にとっては、難解になります。
言葉の問題だけでなく、小説の背景には日本事情があるからです。
文章に表現されていない心情をどこまで読み取れるか。
なかなか答えられずに悩む学生、スッと素晴らしい答えが出てくる学生、さまざまでした。
母国における読書量の影響もあるように感じます。
日本語能力試験の読解問題はレベルが上がるにしたがって、生教材から引用した文章が多くなりますが、答えは選択肢から選ぶことができます。
選択肢のない生教材の読解は、学生にとって非常に勉強になると思います。
「問題をこなすために読む」のではなく、純粋に読むことに集中し、楽しんでいるのがわかります。
小説やエッセイを授業で取り上げたときは必ず最後に感想を言ってもらうのですが、その感想を聞くのがとても楽しいです。
日本人とは違う視点の感想や学生の個性が光るユニークな感想など、聞いていて飽きません。
学生時代、大好きだった国語の授業。
生教材の読解はまるで国語の教師になったような気分を少しだけ味わうことができる時間です。