コミュニケーションはテキスト通りにはいかないものです。
例えば、以前の投稿でも触れましたが、
日本人に借りた物を壊してしまい、謝った上で、「買って返します。」と申し出たとき。
相手が「あ、いいですよ。本当に大丈夫ですから。」と返してきたら、どう会話を続ければいいのか。
相手との関係性や壊した物の値段によって、対応の仕方は変わると思います。
そのような対応の仕方を場面を設定し、数パターン教えるのが日本語教師の役割です。
介護の日本語で言えば、利用者さんに昼食の声かけをしたら、「今日は食べたくないから要らない。」と言われたとき。
入浴の日に「お風呂に入りたくない。」と言われたとき。
これらはよくあることなので、拒否をされたときの対応の表現は、介護のテキストにもありますが、実は、利用者さんによって、対応の仕方は異なります。
マニュアル通りにはいきません。
介護施設で働き始めたばかりの外国人に教えるときは、このような利用者さんの言葉を聞いて、日本人職員に正確に伝える練習が必要になります。
特に、介護現場は「想定外」の事態に対応する場面が多いので、私も慣れるまでは戸惑いの連続で、そのつど他の介護職員に聞きに行っていました。
慣れてくると、そのような「想定外」が予測できる事態になるので、どう対応したらいいのかもわかるようになりました。
もちろん、外国人介護職員も、経験を積めば、日本人職員の真似をして、言われたことに対して、その利用者さんに合わせた的確な日本語を使った対応ができるようになるのが普通です。
この場合は日本語教師が教えなくても大丈夫です。
けれど、滅多に起こらないけれど、介護の現場では起こりうる緊急事態が発生した際、どのような日本語で対応したらいいのか。
そのような質問は学生からされることがあるので、やはり教えていく必要があると思います。
今はテキストが充実していますが、テキストに頼りきらず、常に「日常で起こり得る想定外の場面での対応」を意識して教えていくことが、介護の日本語に限らず、どんな学習者に対しても忘れてはいけないことだと改めて感じています。