私は日本語教師になってから、国内では、ビジネスマン、定住外国人などに対する日本語教育に携わりつつも、主に留学生を対象に教えてきました。
それが、ここ数年で変わりました。
現在は、外国人介護職員に対する日本語教育がメインの仕事となりました。
EPA介護福祉士候補者、介護の技能実習生に日本語を教えていますが、私が雇用されている企業の持つ「力」に圧倒され続けています。
企業レッスンは留学生対象の日本語学校などと違い、仕事がメインで来日している学習者に教えるので、授業の回数や時間は少ないのが普通です。
それでも、彼らの日本語力は目に見えて上達していきます。
介護職は国籍を問わず、コミュニケーションスキルが重要視される仕事です。
外国人介護職員が現場でそれを痛感させられることが日本語力の向上につながるのは想像に難くありませんが、彼らの近くにいる日本人職員の方々の力によるものが大きいと実感しています。
現場で日本語を教えたり、ミスを直してくださったり、現場で必要な日本語が早く覚えられるようにさまざまな工夫をしてくださったり。
また、彼らが一生懸命に日本語や日本の文化、習慣について学んでいるのだから、日本人も彼らの国について学ぼうと、勉強会を開いてくださったこともあります。
日本語教師としての意見、アドバイスなどを求められることも多いですが、真摯に聞いてくださいます。
そして、授業で取り上げてほしい練習を提案してくださることもあります。
私からも授業で取り上げた内容の確認をタスク形式で宿題にし、日本人職員の方に協力していただき、仕上げてくるよう学生に話して、次の授業で発表させたりしています。
介護現場の忙しさを知っている私としては、職員の方々に負担をかけてばかりで申し訳ないなと思っていますが、ふと気がつきました。
これが本来の企業レッスンの理想に近いのではないかと。
日本語教師が学習者に接する時間は僅かであり、期間も限定されています。
対して、現場の職員の方々はずっと彼らとともに働いていく立場。
日本語教師は、日本語を教えることだけでなく、企業に、広い意味での日本語教育をバトンタッチしていく役割も担っているのではないかと。
企業側のご協力なくして実現できないことですが、それが得られていることに感謝の気持ちでいっぱいです。
洞察力、臨機応変さ、柔軟さが常に求められる介護職員の方々だからこそ、いい関係を築かせていただけているのかなとも思います。
私自身、試行錯誤しながら、介護の日本語教育に取り組んでいますが、もっともっと効果的な授業が行えるように、頑張っていくつもりです。