日本語学校で、学校の指示の下、プロジェクトワークを行なったことがあります。
学校行事である運動会の企画、実施。
学生が他のクラスにアンケート調査を行い、結果を踏まえて競技内容を決定し、
当日の進行も全て学生が行いました。
他にもいくつか経験がありますが、
いちばん印象に残っているのは
演劇です。
学校の指示は、「劇を発表すること」
専任に相談し、昔話から選ぶことにしました。
図書館で昔話の絵本をいくつか選び、
クラスに見せて、相談し、決めました。
次は台本作成です。
再び図書館に行き、紙芝居を借りてきて、自分で台本を作成しました。
子ども向けの紙芝居といっても、難しい語彙や表現があるので、日本語を直す必要がありました。
また、発表の場は2回あり、ダブルキャストで行うことになっていたのですが、
登場人物が足りませんでした。
そこで、架空の登場人物を考え、台詞を作り、調整しました。
授業時間などを使って、数ヶ月かけて
仕上げていきました。
学生は演者、小道具・舞台セットの作成に分かれ、演出は私がやりました。
衣装は専任の先生にほとんどお任せしました。
まずは、台本の読み合わせからスタートしましたが、ここで発音矯正の必要が
出てきました。何回も直しました。
次に、台詞を暗記して、動きの練習。
何度も何度も練習しました。
本番前は通常の授業を潰して練習したり、授業後に残って練習したりしました。
学生の努力のおかげで、本番は成功し、学生は本当に嬉しそうでした。
達成感が得られたと思います。
と、ここまで書くと、意義ある取り組み
という感じに聞こえると思いますが、
プロジェクトワークに取り組んでいる期間、私はノイローゼ気味でした。
何より難しかったのは学生の意欲を引き出し、持続させることでした。
自発的に「劇がやりたい。」と言ったわけではなく、学校の指示だったため、
劇なんてやりたくない。できない。
面倒くさい。恥ずかしい。
なぜ私たちのクラスがやるのか。
最初はブーイングの嵐でした。
何とかなだめて、練習を始めてからも、
台詞を覚える時間がない。やはり難しい。自信がない、発表したくない。
このような声も出てきました。
また、小道具担当の学生の中には全く
やる気がなく、参加しない学生も出てきました。
このような状況をうまくまとめていくのが教師の仕事ですが、当時、中堅教師だった私にはそれだけの余裕と力量が十分あるとは言えませんでした。
プロジェクトワーク以外に、非常勤講師としての担任の仕事、他の授業と授業準備に追われていて、
自分もいっぱいいっぱいだったのです。
今でも当時の自分を思い出すと、学生に
申し訳なかったと反省します。
学生の不安に寄り添い、励まし、温かい言葉をかけてあげなければならなかったのに、不十分だったと。
学生とぶつかることもありました。
後で振り返ると、貴重な経験ができたと思いますし、その後の授業に生かすこともできています。
反省から学ぶことができたように思います。
学生にとっても、いい思い出になっていればいいなあと願わずにはいられません。
またいつか、プロジェクトワークで劇を
行う機会があれば、学生との時間を余裕をもって楽しみたいなと思います。