大人数の留学生教育、特に、日本留学の入り口である日本語学校では、時に、学生に厳しく注意することも求められます。
授業を進めながら、個別に、あるいは全体に厳しく注意することは容易なことではありません。
特に、まだ教師として教え慣れていないときは授業をするだけでいっぱいいっぱいになりがちです。
けれど、これはとても大切なことです。
まだ若く、異国での生活に緊張しながら日々を送っている留学生にとって、日本語学校は学びの場であると同時に、同じ立場のクラスメートとリラックスして過ごせる場でもあります。
このような場も本当に大切だと思いますが、ともすれば、授業中もリラックスしすぎてしまうことがあります。
そのようなとき、厳しく注意することは日本事情を教えるためにも教師の重要な仕事のひとつなのです。
「厳しく注意するのが苦手。」という先生もいます。
相談されたときは、注意の仕方にマニュアルはないから、自分らしい注意の仕方をいろいろ試し、模索していった
ほうがいいよとアドバイスします。
苦手だから注意しないままでいると、それを学生はよく見ています。
教師がおしゃべりをしている学生がいるのに注意しない
せいで、自分が集中できない、教師が注意しないから代わりに注意して自分が嫌な思いをする、注意しないということはあの先生は学生に興味がないのだと判断する。
このような事態が起こり得ます。
私は厳しく注意できるタイプですが、厳しく注意した後の
フォローが足りず、学生とうまく関係を築けなかった経験があります。
中堅教師のときです。
注意の仕方はいろいろありますが、授業の時間を無駄にしたくないので、私は簡潔にビシッと厳しく注意します。
でも、その後に、休み時間などを使い、注意した学生に話しかけ、どうしてそのような態度をしたのか聞いた上で、アドバイスや、励ましの言葉をかけるようにしています。
ここで思わぬ本音や悩みが聞けることも多いです。
全体に注意するときは、理由をきちんと話してから注意するようにしています。
子どもではないので、話せばわかります。
授業の進め方と同じで、「どんな注意の仕方がいいのか。」というのは教師は皆、悩むところで、時には「注意の仕方が悪かったな。」と反省したり、試行錯誤を繰り返したりしながら、学んでいくものです。
私も厳しく注意した後は必ず振り返り、あの言い方でよかったのかと問いかけ、時に反省することがあります。
この振り返りを行わないと、「ただ厳しいだけの先生」と反発を招く結果になってしまう危険性があります。
「注意すること」は難しいですが、教師にとって、避けては通れない道だと思います。