卒業式、卒業式後の飲み会、
学生が自己都合で帰国する最後の授業の後、
そして、私が学校を辞める最後の授業の日。
今まで多くの「別れ」を経験してきました。
言葉やプレゼントをくれる学生、一緒に写真を撮りましょうと言ってくれる学生、握手をしてくる学生、何も言わず、でも、私が声をかけるのをじっと待っている学生。そっけなく帰っていった数日後、Face bookに友達申請をしてくる学生。
もちろん、いつも通りに「さようなら」と帰っていく学生もいます。
彼らはもう忘れているかもしれない別れのシーンを
私は鮮明に覚えています。
特に、印象に残っている言葉。
いろいろと大変なことが多かった担任のクラスの卒業式の後の飲み会。最後の時間を心に刻み付けておこうと、
明るくはしゃぐ彼らを横目に、私はお酒を控え、明るくおしゃべりしたり、彼らの姿を見つめていました。
そんな私の横に、やはり冷静に座っていたひとりの学生。
彼はクラスのリーダー格で、何度も私や学生を助けてくれました。自分が大変なときでも。
「先生、僕たちが卒業したら、大丈夫?心配です。」
ふと彼がつぶやきました。
そのときは意味がよくわかりませんでしたが、後でわかりました。彼らが学校からいなくなった後、私は虚脱感に襲われ、空っぽになりました。私が彼らを支えなければと思って必死だったけれど、実は、自分が支えられていたことに初めて気づかされました。
今回、私が辞める最後の日。学校の玄関で学生を見送りました。
ある男子学生が、無言で去ろうとしたとき、「さようなら。元気でね。」と後ろ姿に声をかけました。
すると、彼は振り返り、無言で、無表情のまま、私の右手を取り、自分の額に当てました。
ぽかんとしている私を残し、彼は帰っていきました。
後で、彼の国の目上の人にするあいさつだと知りました。
授業中、ちょっと斜に構えて、しょっちゅうブラックジョークを飛ばしていた姿、でも、実はとても真剣に日本語の学習に向き合っていた姿が脳裏に浮かびました。
このお別れはとても印象的でした。
今は春休み。学生は学校のことなど忘れて、バイトをしたり、友達と遊んだりしていることでしょう。
私はまだ彼らとの思い出に閉じ込められたままでいます。