初任者研修でターミナルケアについて学びました。
死にゆく人の葛藤、苦悩、そして、家族の苦しみ。
講義を受けながら、どうしても亡くなった父のことが頭をよぎり、つらくなりました。
あわや死にかけるという経験はしたことがありますが、余命宣告をされたことはないので、その苦しみはわかりません。
家族の苦しみはわかります。
ある日、父から電話があり、明るい声で「がんになっちゃった。」と言われたとき、ショックで頭の中が真っ白になりました。
長期間、違う病気を抱えていたので、
「ずっと病院通いをしているから、がんにはかからないだろう。もし、なってもすぐに発見されるはず。」と、勝手に楽観視していました。
けれど、話を聞くと、楽観視できる状況ではありませんでした。
明るく、冷静に病状を語る父の声を聞きながら、必死に泣くのをこらえ、私も明るく話しました。
なぜ父はこんなに明るく話せるのか。
その謎は後に解けました。
医師に「年齢や、病歴を考えても、手術が成功する保証はできない。成功しても、寝たきりになるかもしれない。」と告げられましたが、父は手術を受けると強い意思を示しました。同席した家族は内心、反対の思いを持っていましたが、本人の意思を尊重しました。
結局、手術前の抗がん治療に耐えきれず、亡くなりました。
亡くなる1週間前にお見舞いに行ったのですが、いつもの父と変わらず、普通におしゃべりができました。
ただ、照れ屋の父が、じっと私の顔から目を逸らさないことに嫌な予感はしました。
亡くなった後、父の遺品から、手術後の
回復計画が書かれた紙が見つかりました。几帳面な父らしく、詳細に書かれていました。
父はがんと闘い、勝つつもりでいたことがわかりました。だから、弱音を吐かなかったのだと。
死を宣告されたとき、その向き合い方はひとりひとり違う。
大切なことはその人の意思を尊重すること。
これは講義で習ったことです。その通りだと思います。
亡くなった人は肉体は滅びても、大切に思っていた人の心の中で永遠に生き続けます。
今でも父から力をもらい、励まされ、
そして、生きていることに感謝しています。
ターミナルケアについては、医療、介護関係者だけでなく、全ての人が学んだほうがいいのではないかと感じました。
人は誰でも生まれた瞬間から死に向かっていくのですから。