以前、0レベルスタートの数回目のクラスの授業をしたときのことです。
まだ、名詞文しか入っていませんでしたが、授業の最後にインタビューワークを
予定していました。
ところが、教案に書いてある時間と、
実際の時間が大幅にズレて、押せ押せに
なってしまいました。
インタビューワークまでいけるだろうか。不安がよぎりました。
インタビューワークがその日の授業の
到達目標であり、学生が、習った文型で
実際に話せるようになったという達成感を得られる活動だったので、省略はしたくない。
何とか最後の10分くらいのところで、
インタビューワークに入れました。
大人数クラスで、全員立って、クラスメイトにインタビューし、インタビューシートに答えを記入していきます。
学生たちは少しずつ話せるようになってきたのがうれしいようで、積極的に取り組み始めました。
本来なら、全員にインタビューし、その結果を数人に発表してもらう予定でした。
インタビューワークは通常、この流れです。結果を必ず発表してもらいます。
が、時間が足りない。発表させるとなると、早々にインタビューワークを切り上げなければなりませんでした。
悩みましたが、活動自体は易しいレベルで、ワーク中、間違えて発話している学生もいませんでした。
このまま、時間いっぱいインタビューワークをして終わろう。それでも全員にはインタビューできないだろうし。
学生の様子を見て、私はそう判断し、
授業を終えました。
ところが、時間になり、「はい、終わります。」と言ったとき、ひとりの学生が私に言いました。
「先生、発表は‥?」と。
0レベルといっても、国で日本語の学習経験がある学生が多く、また会話も少しできる学生もいます。
その学生もそのひとりでした。
「ごめんね。時間がないから。」と私は答えました。
彼の意見は全員の意見ではなかったと
思います。
けれど、すごくいいことを言ってくれたと感謝しています。
以来、時間が押してしまっても、インタビューワークをしたときは必ず最低でも数人に発表してもらうようにしています。
学生は思っていても、口には出さないことも多いので、言ってくれてよかったです。
後に、卒業まで教えた学生ですが、鋭い観察眼を持つ学生でした。