日本語学校における「日本語教育」とは何か。
連日の報道を通じ、日本語教育に関する情報が錯綜していると感じる日々が続いています。特に、日本語学校の役割が理解されていないと思います。
まず、留学生の入り口である「日本語学校」の本来の役割は、「専門学校や、大学、大学院への進学」です。
ほとんどの学生は国で日本語学習歴がありますが、既に、中級レベル以上の4技能を身につけている学生以外は、0レベルのクラスからスタートし、レベル別に、N3~N1合格を目指すことが多いです。そして、自身の日本語能力と希望に合った進学先を受験します。進学後、日本で就職する学生も多いです。
しかしながら、日本語学校では、試験対策だけ行うわけではありません。地方の学生は、学校の寮に住むことが多いですが、日本での生活習慣や、マナー…ごみの出し方、
隣室、近所の人への配慮、掃除の仕方なども教えたりします。避難訓練も行います。
また、学生から、日本語や、アルバイトや、人間関係などの悩みを聞いて、アドバイスをしたり、体調不良の学生に病院を紹介したり、事務の方に病院に連れて行ってもらったり、病気や事故で入院したとき、お見舞いに行ったりします。
学校によって、その範囲は異なるとは思いますが。
授業は初級~上級クラスまでありますが、文法、日本語能力試験対策、日本留学試験対策はもちろん、日本事情、日常会話、敬語などを使用した丁寧な会話、スピーチ、作文、小論文、メールの書き方…あらゆることを教えます。
学生に、日本語力、思考力を身につけさせること、日本事情を知ってもらうこと、日本人と円滑なコミュニケーションが取れるようなスキルを身につけさせることなどを目標にカリキュラムが組まれています。
学校によっては、中高生や、大人の日本人との交流会も
あります。
地域の日本語支援教室と重なる部分もあると思いますが、
地域の日本語支援教室だけでは補いきれない部分を担っていますし、その逆も然りです。
特定技能制度がスタートすれば、日本語学校の存続の危機という報道も目にしますが、どうなるのでしょうか。
確かに、日本語学校を卒業後、すぐに就職したいと希望する学生は増えてきています。そこは個人の選択だと思います。
ただ、私は先に述べた日本語学校の持つ役割は重要だと思いますし、その形態は変化していくと思いますが、なくなることはないと感じています。
と同時に、地域の日本語支援教室の重要さは増すであろうと思いますし、「多文化共生」に多くの日本語教師も携わっていかなければならないのではないかと感じています。