ノンフィクション作家 久田恵 2018年11月5日

大好きなノンフィクション作家のひとり、久田恵さん。

初めて読んだのは、『フィリッピーナを愛した男たち』1990年の作品で、第21回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しています。

フィリピン人女性と結婚し、フィリピンに住む日本人配偶者や、日本に住む日本人配偶者、そして、その妻であるフィリピン人の本音。彼らの生活や、異国での偏見との戦いについてなど、久田さんならではの優しいまなざしで語られている作品です。

他に好きな作品は、『ニッポン貧困最前線 ケースワーカーと呼ばれる人々』(1994年)、『母のいる場所 シルバーヴィラ向山物語』(2001年)など。

シルバーヴィラ向山は久田さんのお母さんが入られていた介護施設。ユニークで、自由で、読んだ人は「私も老後はここに入りたい。」と思わずにはいられなくなると思います。

これらの作品はいずれも最近のものではありませんが、今、日本が抱えているテーマとリンクしていて、
時代を先取りした視点の鋭さに驚かされます。

そして、いちばん好きなのは『サーカス村裏通り』(1986年)。小さな息子さんをつれて、久田さん自身が働いていた、全国を巡業していくサーカス団の生活について書かれています。読んでいると、情景がくっきりと浮かび上がってくる素晴らしい作品です。

この本に登場しているかわいい息子さんは、2005年に第36回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したノンフィクション作家の稲泉連さんです。

椎名誠さんの娘さんである渡辺葉さん、
新田次郎の息子さんである藤原正彦さん。お二人の本業は文筆業ではありませんが、その文章力を見ると、「作家の血筋」を感じずにはいられません。

親が子どもに与える影響と、受け継がれる才能は確かにあるのだなと思います。

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