「ためらい」の作法 2018年6月5日

初級のテキストの会話にもよく見られる、同僚などと食事に行き、注文し、支払いをする場面。

「わりかん」の多い日本人を想定し、
「別々にお願いします。」などの表現も出てきます。

このような会話を教えるときは、日本人の「わりかん」の
感覚や、逆に「わりかん」をしない状況も話します。
そして、自国と比較させます。

練習するようにしているのは、学生が遭遇するであろう場面。バイト先で食事に行ったり、飲みに行ったりしたとき、ごちそうしてもらうときのやりとりです。

まず、私がごちそうする側になり、「ここはいいですよ。」と、財布を出す。学生は、母語は浮かんでも、日本語は
とっさにわかりません。たいてい、すぐ「ありがとうございます。」と、返します。

日本人の、えっ、それは申し訳ないなあ…という気持ちの
こもった、ためらう表現は教えなければ出てきません。

抑揚や、間の取り方なども気をつけながら、少し練習し、
私を相手に、学生と短いロールプレーをして、他の学生に
見せます。

自国について聞くと、時代とともに、わりかんが増えているという国、日本と近い感覚を持っている国、誰かが代表して払うという国、いろいろあるようです。

ごちそうされたら、お礼を言うのは万国共通かなと思うの
ですが、日本人のためらいがちに、お礼を言ったり、
最初は断って自分も財布を出して、そのあと、引っ込めたり
という作法?は、私が外国人だったら、難しいのではないか
と思って、初級のうちから、チャンスがあれば、紹介する
ようにしています。

このような「ためらいの表現」がテキストになくても、学生に必要だと思ったら、教案に入れていきます。

これはひとつの例で、日本事情に絡める場面や、表現が出てきたときは、そこから広げて教える意識を持つようにすると、生きた日本語を教えることができると思います。

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